2017/08/17 01:27

 

「釜炒り茶」をご存じですか?

摘んできた茶葉を直火で熱した釜で炒りあげてつくる、すっきりした飲み口と独特の香ばしさが特徴のお茶のこと。

 

今日ご紹介するお茶は、きっとみなさんの日本茶観をひっくり返すと確信しています。

「こんなに香ばしくて何煎も淹れられる日本茶、はじめて!」ときっと感じていただけるはず。

 

一般的に流通する緑茶は蒸してつくる「煎茶」が殆どですが、

釜炒り茶は江戸期まで民間で盛んに作られていた日常茶。今も作り手が残る土地はあれど、激減しています。

 

平成23年のデータによれば、「釜炒り茶の生産は全体のうち2%あるかないか」という程度なんです。

 

今回はこの釜炒り茶の中でも、さらに作り手が少ないとされる「青柳(あおやぎ)製釜炒り茶」をご紹介。

昭和初期に製造された、丸釜と呼ばれるトップ写真の製茶機械を使う現在では非常に希少なお茶で、

釜炒り茶作りが比較的盛んな熊本県下においても今は2名しか作り手がいないとも。

 

作り手は熊本県八代市の山里・泉町にお住まいの船本家。

この町では釜炒り茶の生産が盛んだったそうですが、今では船本家が最後の一軒。

残る農家はみな蒸し製のお茶を自製するか、近くの茶工場に茶葉を持ち込みます。

 

今年で80歳になるのが、釜炒り茶師・船本繁男さん。

数ある釜炒り茶作りの中でも、「青柳製じゃないとほんとの味がしない!」と、このお茶作りにこだわって細々と生産を続けてこられました。

 

 

ちょうど5月のはじめでお茶づくりが始まる時期に、今年も訪ねました。

お茶作りは子どもさん達も駆けつける家族総出の大仕事です。

 

刈り取った茶葉は写真のように敷き詰めて少し萎れさせます。茶葉の酵素がはたらき、涼しく爽やかな香りが生まれる大切なプロセス。

 

このあと、トップ写真にある「丸釜」を使いお茶を炒ります。

プロパンガスを使い、300℃を超す高熱でお茶を炒ります。バチバチという音とともに

あたりに満ちる、甘涼しく香ばしいかおり。すでに他のお茶とは全く異なる気配を放っています。

 


 

炒り終わったら、茶葉を揉みこんで水分を絞り出し、さらに炒りあげて乾燥させる工程が続きます。

当店ウェブサイトのブログに、この工程の詳細を掲載しています。ご興味があれば、ぜひのぞいてください)

 

 

完成した、青柳製釜炒り茶。

煎茶に比べると、生産効率は著しく低い希少なお茶です。(一時間あたり生葉10kgほどしか処理できない)

 

スモーキーな香りは、燻した樽で熟成させた洋酒にも似ています

強い芳香とは裏腹に煎を進めても胃に負担を感じにくく、優しいお茶であることを体感します。

このお茶を少しずつすすりながら頂くご飯は格別。日常茶の一つの到達点として、気兼ねなく味わいたい。

 

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出来立ての荒茶をご家族皆で飲んだときの会話。

 

長女さん「お父ちゃん、今年のは例年より大人しいけど、優しくてうまいよ!」

繁男さん「うん、わりとよくできたかな」

 

80歳になる繁男さんの体をいたわりながらのことば。

「うまくない」なんてことは、決してないのだろうなと思いました。

 

お茶をずっと家族で作ってきた積み重ねが、短いけれど温かさのこもったことばの中に感じられます。

 

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無農薬・青柳製釜炒り茶。限定生産につき数量は僅少。

昔ながらの日本茶の姿を感じてみたいなという方に、心からおすすめできる優しいお茶です。

50gいり ¥2,000 です。